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新型コロナ禍でキャンセル続出の歯科医院~非常時に行くべきか否か~

【第3回】斎藤先生がこっそり教える 歯医者のホント~「歯科の駆け込み寺」~

■歯を抜きたがる歯医者は要注意

 患者からの信用をえられない理由のひとつとして、斎藤歯科医師が挙げるのは、歯科医療界で儲け主義が横行している点だ。

「とにかく、やたらと歯を抜きたがる歯医者には要注意です。私はなるべく歯を抜かない治療を心がけています。進行した虫歯の場合は、根管治療を行います。細い針のような器具を使い、菌に侵された歯髄を取り除き、根管内を洗浄し消毒します。その後もいろいろな作業を経て、最後に根管内にガッタパーチャという弾力性のある充填剤を注入して、穴をふさげば完了です。根気と時間がかかる治療ですが、保険点数は非常に低い。儲からないうえに、技術も必要なので、最近の歯医者はこの根管治療を嫌がり、すぐに歯を抜こうとするのです」

 

 歯にヒビが入ると、歯科医師の多くは抜くという判断をする。治すのが難しいからだ。だが、斎藤歯科医師の場合はスーパーボンドなどを使い、歯を極力、残す。しかし、これも手間と時間がかかる作業だ。効率を重視する儲け主義の歯科医師は、こうした治療を敬遠するのである。

「永久歯は一度、抜けたら、二度と生えてこない。できる限り、歯は守らなければいけないのに、残そうとする努力もせずに平気で抜く歯医者がいるのは残念だし、腹立たしい。特にインプラントをビジネスの中心にしている歯科医院では、いろいろな言い訳をつけて、抜く方向に誘導するケースが少なくないのです」

 

 安易に抜きたがるのは、歯科医院ばかりではない。2018年夏に斎藤歯科医師のところを訪ねてきたのは、大学病院で治療を受けていた40代半ばの男性だった。

「左上6番(大臼歯)のあたりが腫れを繰り返すので治してほしいと大学病院の歯科医師に訴えたら、抜いてインプラントか入れ歯にしましょうと言われたというんです。その大学病院には、歯のクリーニングで3ヵ月ごとに通っていたそうです。自分は歯を抜くのは嫌だからと、うちに来たんですが、診てみると、抜く必要など、まったくなかった。その患者さんに『絶対、抜くことはありません』と言ったら、すごく安心したようでした」

 

 以降、その男性患者は半年ごとに斎藤歯科医師の歯科医院に通っている。通常、3ヵ月ごとの定期健診が一般的だが、半年ごとでは間が空きすぎていないだろうか。

「ケースバイケースですが、この患者さんの場合、半年ごとの定期健診で十分だと判断をしました。そのつど、レントゲンを撮っていますが、症状は進んでいない。いずれにしても、レントゲンだけで『抜きましょう』と判断した大学病院はお話にならない。抜く、抜かないの判断はレントゲンだけではできません。担当したのは研修医だったそうですが、やっていることがあまりにもずさんです」

 

 大学病院なら最高の治療を受けられると信じている患者が少なくないが、それは大いなる勘違い。研究と練習の場になっている大学病院では必ずしも、懇切丁寧な治療が受けられるわけではないのだ。

 

■継続治療でも初診料がかかる場合

 半年ごとの定期健診ではもうひとつの懸念がある。3ヵ月以上、間が空くと、再診料(510円、患者3割負担153円)ではなく、初診料(2510円、同753円)がかかってしまう。なお、2020年度の診療報酬改定で、この4月から再診料が530円(同159円)、初診料が2610円(同783円)に引き上げられる。

「私の判断で、初診ではなく再診という形にしています。厚生労働省におもねっているつもりはないのですが、半年空いていても、継続治療であるのは間違いないのですから。けれど、3ヵ月を数日すぎただけでも、初診料を請求する歯医者が少なくないことにがっかりしてしまう。お金をいかにたくさん取るかばかりに執着しているのです」

 

 さて、新型コロナ禍の中で歯科医院に行くべきかどうかの判断だが、斎藤歯科医師は次のようにアドバイスする。

「耐えられない痛みが続く場合や、食事に支障が出るほど、歯がグラグラしている場合は、やはり直ちに歯医者で診てもらったほうがいいと思います。なお、痛みは市販のロキソニンでもかなり抑えられるので、すぐに歯科医院に行けない場合は、そうしたものも利用してみてください」

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『歯医者のホントの話』 斎藤正人/田中幾太郎

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斎藤 正人

さいとう まさと

サイトウ歯科医院

院長

1953年東京都生まれ。神奈川歯科大学大学院卒。極力、歯を抜かずに残す治療を心がけ、「抜かない歯医者」を標榜する。一昨年9月『この歯医者がヤバい』(幻冬舎新書)を上梓。


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